法人が、法人税法による法定の帳簿書類を備付け、納税地の所轄税務署長に青色申告の承認申請を行い承認を受けた場合には、青色申告法人にのみ付与される税務上の特典を与えられることとなり、その中の一つとして繰越欠損金の繰越控除と繰戻還付があります。このコラムではこの繰越欠損金の繰越控除と繰戻還付の制度について解説致します。
各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額がある場合には、過年度に生じた欠損金額を損金の額に算入することにより各事業年度において生じた所得の金額と相殺することができます。なお、平成30年3月31日以前に開始した事業年度において生じた繰越欠損金の繰越可能期間は10年間ではなく9年間とされております。
また、税務上の中小法人以外の法人については所得の金額と相殺することができる欠損金の額が各事業年度の所得の金額の50%に制限されております。
ここで税務上の中小法人等とは以下のいずれかに該当する法人になります。
適格合併が行われた場合には、被合併法人で合併前から保有していた繰越欠損金は合併後に合併法人において合併前から保有していたものとみなされることとなりますが、以下の(1)又は(2)のいずれの要件にも該当しない場合には、合併法人及び被合併法人の双方において合併前から保有していた繰越欠損金の引継・使用が制限されることとなります。
(1)次のいずれかの日のうち、最も遅い日から継続して支配関係等(50%超の資本関係等)がある場合
(2)その適格合併が「共同で事業を行うもの」として以下の1から4までもしくは1及び5の要件を充足する場合
繰越欠損金を有する法人を買収し買収後に当該欠損金を利用することにより別の事業で生じた所得を圧縮するといった租税回避行為を防止するため、欠損等法人がその買収後5年以内に、買収前の事業の全部廃止、その事業規模を大幅に超える資金借入れを行う等一定の事由に該当するときは、欠損等法人の欠損金の繰越控除が制限されます。
具体的には、他の者による特定支配関係(50%超の資本関係)が生じた日(支配日)の属する事業年度において、青色欠損金又は評価損資産を有する法人(欠損等法人)が、その支配日後5年を経過した日の前日までに次の1から5に掲げる事由が生じた場合には、その該当することとなった日の属する事業年度以後の各事業年度においては、適用事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額については、繰越控除できないこととなります。
欠損金の繰戻しによる還付制度とは、青色申告法人について欠損が生じた場合において、その欠損金を欠損が生じた事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度の所得に繰戻し、その事業年度に支払った法人税額について還付請求することができる制度になります。但し、税務上の大法人(資本金1億円超等の法人)については、現在一定の事由に該当する場合(清算中の事業年度等)を除き当該制度の適用が停止されているため、当該制度は主に税務上の中小法人(資本金1億円以下等の要件を充足する法人)向け制度になります。
欠損金の繰戻しによる還付を行うためには、以下の要件を充足していることが必要になります。
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