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相互協議(MAP)について
(国際税務コラム)

2018.8.11 移転価格課税を受けた場合の相互協議(MAP)等による事後的対応措置について

移転価格税制は他の税制と比較すると各当事者の有する機能やリスクに対する解釈について裁量の生じる余地が大きく仮に適切な移転価格文書化を行っていたとしても税務当局との事前確認(Advance Pricing Agreement=APA)以外には、残念ながら100%完全に移転価格課税リスクを排除することはできないのが実情であります。ここで一方の国で移転価格課税を受けると他方の国では当初の所得配分に従い課税されていることから、同一の所得に対しそれぞれの国で課税されることによる二重課税が生じることとなります。二重課税の発生プロセスは具体的には以下のような形になります。

当初課税額

A国 (税率30%)所得50 税額15

B国(税率20%)所得50  税額10

A国とB国の合計税額25

その後A国での税務調査により所得30について移転価格課税あり

A国(税率30%)所得80 税額24

B国(税率20%)所得50 税額10

A国とB国の税額34

上記のような形で仮にA国で所得30の移転価格課税を受けてもB国では当初の所得50について特段修正が行われないことから、A国で移転価格課税を受けた分の所得についてはA国とB国の双方で課税される事態が生じることとなります。このことを同一の所得について2重に課税が行われる二重課税とよびます。国際課税の世界においては基本的思考としてこのような二重課税を好ましくない事態と捉えており、このような移転価格課税による二重課税を双方の税務当局が所得配分について合意し解消するための協議を相互協議(Mutual Agreement Procedure(MAP))とよびます。本コラムではこのような移転価格税制による二重課税が生じた場合の事後的対応措置について解説致します。

相互協議による二重課税の解消には相当の期間とコストが必要

相互協議はその前提として相手国との間に租税条約が締結されていることを前提としております。また仮に納税者が相互協議の申立を行った場合、税務当局は相互協議の申立を受け付けてはくれるものの合意する義務はないことから、特に新興国との間で申立が行われた場合には必ずしも二重課税を解消できるとは限らないことに留意が必要になります。

また、相互協議では双方の税務当局が自国への所得の帰属を主張することとなるため、それを理論的に分析できるよう追加的な分析資料の提出を依頼されたり、不明な点についての質問への対応を求められることとなり、通常はこのような対応を納税者だけで行うことは困難であることから、両国で専門家に依頼することとなります。ここでこのための対応を大手税理士法人に依頼した場合のコストですが、通常は片方の国だけで数千万円以上の費用が必要となり期間も平均すると2年程度かかることとなります。従って、数百万円から数千万円の課税事案では仮に二重課税を解消できたとしても経済的に見合わないことから申立を行わずに課税を受けた年度分については二重課税のままで終え将来にかけて見直しを行うという形で終えるケースも実務的には少なくありません。

また、相互協議以外に二重課税を解消する手段としては、国内救済措置としての不服申立てと税務訴訟がありますが、こちらについては裁判まで行うことを想定した場合、相互協議以上の期間とコストが必要になります。

以上のように実際に移転価格課税が行われた場合に二重課税を解消することは特に中堅・中小企業にとっては相当に高いハードルであるものということができます。

移転価格ポリシーを構築し適切に移転価格文書化を行い移転価格課税を事前に防止することが費用対効果の観点から効率的

移転価格の税務調査は税務当局にとっても相応の負荷になることから、余程金額が大きく仮に否認できた場合多額の追徴課税を行うことが期待できる取引でない限り、移転価格ポリシーを構築しそれについて移転価格文書化を行いかつポリシーに定めた条件に従い取引を行っている限り、中堅・中小企業に対しあえて税務当局が移転価格の税務調査を行うケースは決して多くないものと考えられます。

従って実際に移転価格課税が行われてしまった場合の解消のための労力やコストを考慮すると移転価格課税が行われないように事前に予防的措置を講じることが費用対効果の観点からすると効率的であるものと考えられます。当事務所では、移転価格・国外関連者寄付金認定を受けないための移転価格ポリシーの構築や移転価格の文書化支援に注力しておりますので、対策にお困りの企業様においては是非当事務所までお声がけ頂ければと存じます。

【当事務所サービス】                              当事務所では、移転価格税制に関する以下のようなサービスを提供しておりますので、お困りの際は随時以下のお問合せフォームよりご連絡ください(ご相談については、本契約締結までは無料になります)。                          

  • 海外子会社との取引実施の際の取引価格についてのルール(移転価格ポリシー)設定の際のアドバイス
  • 移転価格税制対策のための社内関係部署の協力体制を構築するための社内の勉強会及び社内マニュアル作成支援
  • 移転価格文書(ローカルファイル)作成支援

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