日本の親会社が海外子会社に対し出張や出向による支援や経理や人事の代行サービスなどの支援業務を提供した場合には、企業グループ内役務提供(IGS)を行ったものとして、海外子会社から適切な対価を収受する必要があります。このコラムでは、企業グループ内役務提供(IGS)について、移転価格税制上の論点を解説致します。
移転価格税制適用の対象となる取引は通常第3者間で行われた場合対価の支払いが行われるような全ての取引を含み、国税庁の移転価格事務運営要領では以下の業務が例示されております(2018年4月25日時点)。
上記を見ると通常親会社が子会社のために提供するであろう活動の大半が含まれており、このような業務を日本の親会社が海外子会社に対し提供していながら、対価を収受していないようなケースでは移転価格税制に関する税務調査が行われた際に対価の収受漏れを指摘される可能性があります。
移転価格税制の観点から対価の収受が必要となる活動には、上記で例示列挙されているもの以外にも通常第3者間で提供が行われたならば、対価の収受が必要となる全ての活動が対象になりますが、例外となる活動が株主活動と重複活動になります。
株主活動とは有価証券報告書作成のための活動や日本親会社の役員が海外子会社の株主総会に出席するなどのため海外に出張することなどになります。もう一つの例外である重複活動とは、海外子会社と日本親会社とで重複して行っている活動で、このような活動については海外子会社が事業判断の誤りに係るリスクを減少させるためあえて重複して行っているもの等でない限りにおいて、海外子会社のために行っているものとは認められないため例外とされております。
移転価格税制ではこの株主活動と重複活動に該当しない限り、通常第3者間であれば対価の収受が行われる役務提供を親会社から海外子会社に提供した場合には対価の収受が必要となるものとされております。
日本親会社から海外子会社に対する役務提供取引について、当該役務提供取引に類似する非関連者間における取引情報があれば、当該取引における価格をもとに関連会社間取引の対価算定を行うこととなりますが、そのような取引情報はないことが大半です。その場合には親会社で要した人件費等のコストに一定のマークアップ率を乗じることで対価を算定することとなります。なおその際対価算定のベースとなるコストには給与等の直接コストだけでなく、一般管理費も含まれることに留意が必要です。またマークアップ率については、高すぎると費用の支払いを行う海外子会社側で移転価格税制上問題になり、低すぎると役務提供を行う日本側で移転価格税制上問題になるため、役務の性質に応じた適正なマークアップ率を乗じる必要があります。
【当事務所サービス】 当事務所では、移転価格税制に関する以下のようなサービスを提供しておりますので、お困りの際は随時以下のお問合せフォームよりご連絡ください(ご相談については、本契約締結までは無料になります)。
お問合せはメールで受け付けています。
24時間お気軽にお問合せください。面談をご希望の場合、近隣のお客さまであれば面談を実施することも可能です。
遠方のお客さまの場合、原則お電話(Skype)でのご相談となりますので、ご了承ください。
9:30~18:00
土曜・日曜・祝日
〒104-0053
東京都中央区晴海5-6-2