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移転価格文書化制度について
(国際税務コラム)

2018.10.21 移転価格文書化制度について

OECDによるBEPS行動計画を受け日本においても平成28年度の税制改正により2016年4月1日以降開始事業年度より「マスターファイル」、「国別報告書」及び「ローカルファイル」について多国籍企業についての作成義務が法制化されることとなりました。このコラムではこの移転価格文書化制度の概要及びOECDによるBEPS行動計画により移転価格新文書化制度が提言されることとなった背景について解説致します。

1.BEPS行動計画とは

2.移転価格文書化の目的

3.事業概況報告事項(マスターファイル)について

4.国別報告事項(CbCR)について

5.ローカルファイル(移転価格文書)の概要

6.ローカルファイル(移転価格文書)の

 

なお、移転価格文書化制度については以下のコラムもあわせて御覧ください。

移転価格税制の基礎を図解を用いた解説

1.BEPS行動計画13とは

BEPSとは、BaSE Erosion & Profit Shiftingの略称であり、日本語にすると「税源浸食と利益移転」になりますが、内容としては欧米を中心とする多国籍企業グループが国際的な税制の隙間や抜け穴を利用することにより、軽税率国に利益が移転され本来であれば課税権があるはずの国の税源が浸食されている状態であり、近年税の世界において特に問題視されている事項になります。

このような状況に対する対抗措置として、2013年7月にOECDにより15にわたる行動計画が公表されました。

OECDによるBEPS行動計画についてはこちらも御覧ください。

このOECDによる15にわたる行動計画のうち。移転価格税制に直接関連する項目が「行動計画13:移転価格文書の再検討」になります。

OECD行動計画では、多国籍企業グループに対して、以下の3種類の資料整備を要請しております。

  • 事業概況報告書(マスターファイル)
  • 国別報告書(CbCR)
  • ローカルファイル

このうち、「マスターファイル」はグループ事業の全体像についての記述を求める書類、「国別報告書」は国別の損益情報や事業上の役割分担を求める書類であり、「ローカルファイル」は各国の納税主体たる法人別にそれぞれが関わる関連者間取引についての詳細な記述を求める書類になります。

なお、3種類の資料のうち「ローカルファイル」」は従前から存在していた移転価格文書に相当する書類であり、「マスターファイル」及び「国別報告書」については新たに導入された書類になります。

BEPS行動計画13を受け日本においても平成28年度税制改正により、移転価格の新文書化制度が導入され、平成28年4月1日以降開始事業年度より当該移転価格新文書化制度に対する対応が法制化されております。

2.移転価格文書化の目的

OECD多国籍企業及び税務当局のための移転価格ガイドライン2017年度版「以下、「OECD移転価格ガイドライン2017年版」)によると移転価格文書化の3つの目的は以下の通りとされております。

  1. 納税者に対して、関連者間取引の価格及びその他条件の設定及びその取引から生じる所得の申告に当たり、移転価格を適切に検討する機会を確保(独立企業原則に係るコンプライアンスについての納税者による評価
  2. 税務当局に対して、移転価格リスク評価の実施に必要な情報を提供(移転価格のリスク評価
  3. 税務当局に対して、自国納税者への徹底した移転価格調査を適切に実施するために有益な情報を提供(移転価格調査

 

1.独立企業原則についての納税者による評価

OECD移転価格ガイドライン2017年版では、移転価格文書の作成が求められる第1の目的として「納税者に対して、関連者間の取引価格及びその他条件の設定及びその取引から生じる所得の申告に当たり、移転価格を適切に検討する機会を確保」することとしております。すなわち、移転価格文書化を行うことにより、まず納税者自身がコンプライアンス上の要請としてグループ内の国外関連取引について移転価格税制の観点からの分析を行い、分析した結果について適切に文書化を行うことが必要であるものといえます。

2.移転価格のリスク評価

移転価格文書の作成が求められる第2の目的は、「税務当局に対して、移転価格リスク評価の実施に必要な情報を提供」することとされております。すなわち、税務当局は調査の初期段階において、移転価格調査にふさわしい事案の選定や、重要な論点の絞り込みにあたって納税者の移転価格上の取り決めが、より詳細な検討や税務調査リソースの投入に値するのか否かを評価するために、納税者により作成された移転価格文書をリソースとして用いることになります。

このことは納税者の立場からすると、納税者が、明確で説得力があり、一貫かつ的確な移転価格上の分析を移転価格文書で行っていれば、税務当局が調査の初期段階で移転価格リスクが低いものと判断し、本格的な調査に移行しない可能性が高くなることを意味します

3.移転価格調査

移転価格文書の作成が求められる第3の目的は、「税務当局に対して、自国納税者への徹底した移転価格調査を適切に実施するために有益な情報を提供」することとされております。すなわち、税務当局は移転価格リスク評価の結果、移転価格リスクが高いと判断した取引について詳細な移転価格調査を行うこととなりますが、移転価格調査では納税者の事業や機能の情報、関連者間取引を行う各関連者の事業、機能及び業績に関する情報、内部比較対象取引を含む比較対象取引候補の情報、比較対象候補となる非関連者間取引及び非関連者に関する事業及び業績に関する文書等が税務当局により提供が求められる情報になります。

このような情報を実際に調査が入ってから準備していたのではタイムリーな資料の提出ができず税務当局との間に不要な軋轢が生じる結果になりかねないことから、詳細な移転価格調査が行われた際にタイムリーに調査官に対し移転価格調査に必要な情報を提供するためにも、移転価格文書を予め入念に作成することが求められることとなります。

3.事業概況報告書(マスターファイル)について

多国籍企業グループによる関係会社間取引を通じた所得の海外移転に対して、税務当局が適正な課税を実現するためには、自国企業の国外関連者との取引に関する情報だけでなく、グローバル全体での関係会社間取引の全体像を把握する必要があります。そのために、BEPSプロジェクトの最終報告書(行動13)によって、マスターファイルの導入が提言され、日本においても平成28年度税制により事業概況報告書(マスターファイル)の作成および提出が義務づけられることとなりました。

事業概況報告事項(マスターファイル)は、多国籍企業グループの組織・財務・事業の概要等、多国籍企業グループの活動の全体像に関する情報を記載した文書で、その概要は次のとおりとなります。

  • 提供義務者

特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人またはPEを有する外国法人。

ただし、提供義務者が複数ある場合に、事業概況報告事項を代表して提供する特例に係る事項を事業概況報告事項の提供期限までにe-Taxにより所轄税務署長に提供した場合には、代表提供者となる法人のみが提供義務者となります。

ここで事業概況報告事項(マスターファイル)の提供義務が生じる特定多国籍企業グループとは、多国籍企業グループのうち、直前の最終親会計年度における多国籍企業グループの総収入金額が1,000億円以上のものが該当します。

なお、総収入金額は、多国籍企業グループの連結財務諸表における売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額(連結財務諸表がない場合には、多国籍企業グループの財産および損益の状況を明らかにした書類に基づいて計算した当該合計額に相当する金額)とされております。

  • 報告項目

特定多国籍企業グループの組織構造、事業の概要、財務状況等に関する事項

  • 提供期限

最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内にe-Taxにより所轄税務署長に提供

  • 使用言語

日本語または英語

  • 罰則

正当な理由なく事業概況報告事項を期限内に提供しなかった場合には30万円以下の罰金

4.国別報告事項(CbCR)について

国別報告事項(CbCR)は、多国籍企業グループの各国・地域別の収入金額、税引前当期利益の額、納付税額、その他の事項に関する情報を記載した文書で、その概要は次のとおりとなります。

  • 提供義務者及び提供期限等

①多国籍企業グループの最終親会社等が日本に所在する場合

多国籍企業グループの最終親会社等が日本に所在する内国法人である場合、当該内国法人は報告対象となる会計年度の終了の日の翌日から1年以内にe-Taxにより国別報告事項を所轄税務署長に提供する必要があります。

なお、この場合、海外子会社所在地国において当該国別報告事項は、日本との間に租税条約による情報交換規定等による適格当局間合意が行われていない国を除き、原則として当該海外子会社所在地国の税務当局へ自動的に提供されます(条約方式)。

②多国籍企業グループの最終親会社等が外国に所在する場合

【原則】条約方式

最終親会社等が外国に所在する場合には、当該最終親会社等の居住地国の税務当局に提出した国別報告事項に相当する情報が当該外国の税務当局から日本の税務当局に提供されるため、原則として特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人には、日本における国別報告事項の提供義務は生じないこととなります。

【例外】子会社方式

例外として、最終親会社等の居住地国と日本との間に適格当局間合意が行われていない等の事由により、最終親会社の居住地国の税務当局が日本の税務当局に対して国別報告事項に相当する情報を提供することができないと認められるときは、特定多国籍企業グループの構成会社である内国法人は、国別報告事項を報告対象となる会計年度の終了の日から1年以内にe-Taxにより、所轄税務署長に提供する必要があります。

  • 報告項目

特定多国籍企業グループの構成会社等の事業が行われる国または地域ごとの以下に掲げる事項

  1. 収入金額、税引前当期利益の額、納付税額、発生税額、資本金の額または出資金の額、利益剰余金の額、従業員の数および有形資産(現金及び現金同等物を除く)の額
  2. 構成会社等の名称、構成会社等の居住地国と本店所在地国が異なる場合のその本店所在地国(本店所在地国と設立された国または地域が異なる場合には、設立された国または地域)の名称および構成会社等の主たる事業の内容
  3. 上記事項について参考となるべき事項
  • 使用言語

英語

  • 罰則

正当な理由なく国別報告事項を期限内に提供しなかった場合には30万円以下の罰金

5.ローカルファイル(移転価格文書)の概要

国外関連取引を行った法人は、当該国外関連取引に係る独立企業間価格算定に必要な書類として法令上定められている書類であるローカルファイルを作成し、保存する必要があります。なお、ローカルファイルは、従前より制度上存在していた所謂移転価格文書と実質的には同じものになります。また、マスターファイル及びCbCRと異なり作成し保存することのみが求められており、税務当局に提出するのは基本的には税務調査において調査官より求められた場合のみになります。ローカルファイルの概要は次のとおりとなります。

  • 提供義務者

国外関連取引を行った法人

  • 作成期限

確定申告書の提出期限

  • 文書化の免除要件

当該一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の取引金額(受払合計)が50億円未満かつ当該一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の無形資産取引金額(受払合計)が3億円未満である場合

  • 提出期限

調査において提示または提出を求められた日から45日以内(上記免除要件に該当する場合は60日以内)の一定の期日

  • 使用言語

指定なし

6.ローカルファイル(移転価格文書)の記載事項

ローカルファイル(移転価格文書)は、①国外関連取引の内容を記載した書類と、②国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類の2種類に大別されます。①国外関連取引の内容を記載した書類の記載事項は以下になります。

  1. 国外関連取引に係る資産の明細及び役務の内容を記載した書類                                                    記載事項については既存の書類をもって説明資料とすることも可能であり、その場合の既存の書類の例としては以下になります。                       ・有価証券報告書、営業報告書または会社案内                   ・商品のパンフレット、カタログまたはプライスリスト                     ・法人および国外関連者の間の契約書                       
  2. 国外関連取引において法人及び国外関連者が果たす機能並びに負担するリスクに係る事項を記載した書類                                                                         法人及び国外関連者の国外関連取引に係る機能(研究開発、設計、調達、製造、組立、技術指導、市場開拓、広告宣伝、販売、アフターサービス等)を、誰がどこでどのような方法で果たしているかを記載しますその際、機能を果たすための重要な判断や決定を誰がどこでどのように行っているか、また、被用の負担は誰がどこでどのように行っているか、                                        また、費用の負担は誰がどのように行っているか、さらに、その機能が基本的活動のみを行う法人の機能とは異なる独自の機能である場合には、独自の機能と判断した理由を記載する必要があります。なお、法人および国外関連者の果たす機能を分析する際、法人及び国外関連者が負担しているリスクも考慮することになるため、リスクに係る情報についても記載します。                                    
  3. 法人又は国外関連者が国外関連取引において使用した無形固定資産その他の無形資産の内容を記載した書類                                                                        法人または国外関連者が所有および登録し、または使用許諾している無形資産のうち、国外関連取引において使用した無形資産の種類、内容、契約条件等について説明するための書類になります。                                                                         国外関連者が使用した無形資産が国外関連取引において重要な価値を有し所得の源泉となると認められる無形資産に該当する場合には、そのように判断した理由を併せて記載する必要があります。                                 重要な価値を有し所得の源泉となるか否かの判断に当たっては、国外関連者の無形資産の形成に係る活動、機能、市場の状況等を充分に分析し、その活動、機能等が基本的な製造・販売等の活動だけでは生み出すことができない利益の発生に貢献しているかについて考慮することが必要になります。                           
  4. 国外関連取引に係る契約書又は契約の内容を記載した書類                                                      国外関連取引に係る契約書が該当しますが、その記載内容については、非関連者間で取引を行う場合に通常記載されるまたは取り決められる取引条件等について明示されている必要があります。                                    
  5. 国外関連取引において国外関連者から支払を受ける又は国外関連者に支払う対価の額の明細、設定方法及び設定に係る交渉の内容を記載した書類並びに当該対価の額に係る独立企業間価格の算定方法及び当該国外取引に関する外国当局による事前確認等の内容を記載した書類                                                                             取引価格の設定に関する書類につき、価格を改定した場合には、改定の時期、改定の理由および改定前後の価格設定方法等並びに価格改定時に参照した情報等を記載する必要があります。                                                                             また、事前確認等の状況に関連する書類は、国外関連取引に係る外国の税務当局のみによる事前確認、国外関連取引と密接に関連する他の取引に係る外国の税務当局のみによる事前確認および相互協議を伴う事前確認並びにこれらの取引に係る外国の税務当局との税務ルーリングがある場合の外国の税務当局からの通知等が該当します。           
  6. 国外関連取引に係る損益の明細並びに当該損益の額の計算過程を記載した書類                                             法人および国外関連者双方の国外関連取引に係る損益の額およびその計算の過程を説明するための書類になります。                                                                     具体的には、管理会計上の区分等をもとに単体の損益計算書から国外関連取引に係る損益を区分し切出すことにより作成し、明確に区分できない共通費用がある場合には、合理的な基準を用いてその費用の配賦を行い、営業損益まで算出することにより作成します。   
  7. 国外関連取引に係る市場に関する分析(当該市場の特性が当該国外関連取引の対価の額又は損益の額に与える影響に関する分析を含む。)等に関する事項を記載した書類                                            国外関連取引の対象となっている商品若しくは製品が販売されているまたは役務が提供されている地理的市場を特定したうえで、その市場の概要およびその市場の特有の状況(市場規模、法人グループのシェア、地理的に特有な事情、許認可、政府の政策、為替の変動等)が国外関連取引に係る対価の額または損益の額に与える影響を説明するための書類になります。                                                                            併せて、当該国外関連取引の当事者がどの取引段階に属するのか(小売または卸売り、一時問屋または二次問屋の別を明らかにすることも必要になります。            
  8. 法人及び国外関連者の事業内容、事業方針及び組織の系統を記載した書類                                               法人及び国外関連者が行っている事業の詳細、事業の方針及び事業戦略並びに法人及び国外関連者の組織について説明する書類になります。                                                          事業の方針及び事業戦略等の記載に当たって、例えば「市場シェアの獲得を目的に、競合相手より安価な価格設定とするため、国外関連者に輸出する価格については戦略的に●%程度低い販売価格を設定している」、「市場に参入したばかりの段階のため、市場に浸透しブランドイメージを構築するために広告宣伝や販売促進を増加させている」、「現地政府の優遇税制を享受するため事業再編を行って機能を変更している。」といった事業の方針や事業戦略の詳細を記載することになります。                                                             
  9. 国外関連取引と密接に関連する他の取引の有無及びその取引の内容並びに密接に関連する事項を記載した書類                                                                       当該項目の書類は、国外関連取引と密接に関連する他の取引が存在するか否か、存在する場合にはその取引の内容、その取引が国外関連取引にどのように関連するかについて説明する書類になります。                                                                       密接に関連する取引には、例えば製造からエンドユーザーの販売まで一連の取引(所謂連鎖取引)であり、一連の取引であることがそれぞれの取引価格に影響している取引があります。

以上が①国外関連取引の内容を記載した書類になりますが、次に②国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類は以下のものになります。

  1. 選定した独立企業間価格の算定方法、その選定に係る重要な前提条件及びその選定理由を記載した書類その他独立企業間価格算定に当たり作成した書類                                                    法人が選定した独立企業間価格の算定方法の内容及びその算定方法が最も適切であると判断した理由を記載する書類になります。最も適切な独立企業間価格の算定方法の選定に当たり、租税特別措置法通達では以下の事項を考慮することとしております。        ①独立企業間価格の算定方法の長所及び短所                    ②国外関連取引の内容及び当該国外関連取引の当事者の果たす機能等に対する独立企業間価格の算定方法の適合性                             ③独立企業間価格の算定方法を適用するために必要な情報の入手可能性        ④国外関連取引と非関連者間取引の類似性の程度                    
  2. 法人が採用した国外関連取引に係る比較対象取引の選定に係る事項及び当該比較対象取引等の明細(当該比較対象取引の財務情報を含む。)を記載した書類                                                  法人が比較対象取引を用いて独立企業間価格を算定するにあたり、比較対象取引をどのような基準に基づいて選定したのかを説明する書類及び比較対象取引に係る企業の概況等を説明する書類になります。                                                                     比較対象取引の選定にあたっては、まず、内部比較対象取引(法人が非関連者との間で行った類似取引)の有無を確認し、非関連者との取引がない場合には外部比較対象取引に係る情報源(企業情報データベース等)に基づいて比較対象取引として利用可能な取引の有無を確認します。                                                                          次に、比較対象取引の選定において、例えば、①棚卸資産の種類、役務の内容等、②売手又は買手の果たす機能、③契約条件、④市場の状況、⑤売手又は買手の事業戦略について国外関連取引との類似性を検討している場合には、その検討した内容を記載します。                                           さらに、外部比較対象取引から比較対象取引を選定する場合には、比較対象取引の選定を行う日において公開データ等より利用可能である最新の情報を利用するとともに、合理的な基準でスクリーニングを行うことが必要になります。                                                        なお、信頼性ある比較可能性分析を行うためには、比較対象取引の選定及び情報の更新を毎年行うことが望ましいですが、国外関連取引と比較対象取引における事業の状況が変わらない場合には、比較対象取引の選定を3年ごとに見直すこととしても差支えないものとされております。                                    
  3. 利益分割法を選定した場合における同方法により法人及び国外関連者に帰属する金額を算出するための書類                                                                        法人が独立企業間価格の算定方法として利益分割法(比較利益分割法、寄与度利益分割法、残余利益分割法)を採用した場合に、利益分割法の分割対象となる合算損益(国外関連取引における両当事者の国外関連取引に係る損益を合算した財務数値)に関する事項を記載した書類になります。                                                                     分割対象となる損益がそれぞれの財務諸表から切出した損益である場合には、切出した売上高、売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業損益並びに各項目の算出過程及び使用した財務データについて記載します。                                                            また、切出損益の作成に当たり、個別に調整した項目がある場合にはその項目、調整方法及びその調整理由についてもあわせて記載します。                   
  4. 複数の国外関連取引を一の取引として独立企業間価格の算定を行った場合のその理由及び各取引の内容を記載した書類                                                                   独立企業間価格の算定は、原則として国外関連取引ごとに行いますが、複数の国外関連取引を一の取引として独立企業間価格を算定するのが合理的であると認められる場合があります。この場合には、その複数の取引を一の取引として独立企業間価格を算定することが合理的であると認められる理由を明らかにしておく必要があります。                                                    複数の取引を一の取引として独立企業間価格を算定することができる場合として租税特別措置法通達では以下のような場合が例示されております。               ①国外関連取引について、同一の製品グループに属する取引、同一の事業セグメントに属する取引等を考慮して価格設定が行われており、独立企業間価格についてもこれらの単位で算定することが合理的であると認められる場合                  ②国外関連取引について、生産用部品の販売取引と当該生産用部品に係る製造ノウハウの使用許諾取引等が一体として行われており、独立企業間価格についても一体として算定することが合理的であると認められる場合                       
  5. 比較対象取引について差異調整を行った場合のその理由及び当該差異調整の方法を記載した書類                                                                             比較対象取引を用いて独立企業間価格を算定する場合において、比較対象取引と国外関連取引との間に、取引価格又は利益率等に影響を及ぼすことが客観的に明らかであるような差異が存在する場合には、当該差異の調整を行った上で比較対象取引として用いることになりますが、当該調整を行った場合の調整の理由やその方法を説明する書類になります。

 

ローカルファイル(移転価格文書)については、上記のような事項を必要に応じ移転価格税制の専門家と協同し記載することとなります。なお、ローカルファイル(移転価格文書)については以下のコラムもあわせて御覧ください。

移転価格ポリシーと移転価格文書(ローカルファイル)の関係について                              

【当事務所サービス】                              当事務所では、移転価格税制に関する以下のようなサービスを提供しておりますので、お困りの際は随時以下のお問合せフォームよりご連絡ください(ご相談については、本契約締結までは無料になります)。                          

  • 海外子会社との取引実施の際の取引価格についてのルール(移転価格ポリシー)設定の際のアドバイス
  • 移転価格税制対策のための社内関係部署の協力体制を構築するための社内の勉強会及び社内マニュアル作成支援
  • 移転価格文書作成支援

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