外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)は、法人だけでなく日本の居住者である個人にも適用される制度になります。
具体的には、個人が低税率国に事業実体のない会社の株式を10%以上所有していた場合には、法人の場合と同様に外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の適用を受け、当該低税率国に所在する会社において生じた所得のうち、当該個人の株式所有割合に対応する部分の金額が当該個人の所得に雑所得として合算され、課税されることとなります。
本コラムでは、個人に対する外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の存在により留意すべき点について解説致します。
富裕層が低税率国に資産管理会社を設立し金融資産投資により生じる税負担を回避するというのは、従前から行われていた典型的な租税回避の方策のうちの一つであるものと考えられます。
すなわち、例えば日本の居住者が低税率国に資産管理会社を設立し、当該資産管理会社で金融資産を保有し配当や株式のキャピタルゲインを計上した場合、本来日本の居住者が直接に金融資産を保有し配当の受領や含み益を有する株式の売却を行った場合には課せられていたであろう日本の所得税が、低税率国に設立した資産管理会社を通じ金融資産を保有することにより課せられないこととなり、容易に租税回避を行うことができるものと考えられます。
しかし、この個人に対する外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の制度があることにより、仮にそのような会社が存在することが個人に対する税務調査等で税務当局に判明した場合には、当該資産管理会社で生じた所得が個人の確定申告の際に雑所得(所得税最高税率45%+住民税10%)として課税されることとなります。
個人で直接金融資産投資を行っていた場合、本来であれば上場会社への金融資産投資であれば源泉分離課税により20%程度の税負担で済むはずであったものが、海外の資産管理会社に投資を行い当該資産管理会社について外国子会社合算税制の適用を受けた場合には雑所得として最高税率の場合55.945%(所得税+住民税+復興特別所得税)が課税されることから、富裕層が低税率国に資産管理会社を設立し租税回避を行う場合には、仮に税務調査等で判明した場合には何もしなかった場合より結果的に多くの税負担を将来に負うこととなるリスクが発生してしまうことといえます。
海外の資産管理会社を使った節税(租税回避)は外国子会社合算税制の適用を受けるリスクがあるにも関わらず、何故従前からそのような節税スキームが流行していたのかについて私見では以下のような要因があるものと考えられます。
1については、日本国内の会社と異なり海外の資産管理会社の情報を日本の税務当局が把握する手段は限定されており、仮に個人が海外の資産管理会社を保有していたとしても、税務調査官がその情報を把握できなかったケースは多々存在するものと考えられます。
しかし現在では、共通報告基準(Common Reporting Standard:CRS)による非居住者金融口座情報の自動的情報交換制度の導入等により、税務当局が海外取引を利用した租税回避行為を捕捉することが可能となっております。
CRSによる非居住者金融口座情報の自動的情報交換制度についてはこちらをご覧ください。
また、2については近年税務当局が海外取引を利用した租税回避行為に対する課税を強化しており、海外取引に関連する課税件数も増加していることから従前であれば指摘されなかったケースでも今後は調査において指摘されるケースは増加するものと考えられます。
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