非居住者が自己の役務提供の対価に基づいて支払を受ける人的役務提供の対価について、日本の国内税法では、原則として、国内において役務の提供が行われたものを国内源泉所得として源泉徴収することを要することとしております。
一方、日本が締結している租税条約では、人的役務提供事業の対価等を、雇用契約に基づく役務提供に係るもの(給与等)と、雇用契約に基づかない自由職業者の役務提供に係るものに区分しそれぞれの取扱いを規定しておりますが、この具体的な取扱いはそれぞれの租税条約により異なります。従って、実際に税務上の処理の判断を行う場合においては、個々の租税条約の内容を確認することが必要です。
なお、「人的役務提供に対する報酬」とは別に「人的役務提供事業の対価」がありますが、「人的役務提供に対する報酬」が自己の役務の提供に基づいて支払を受けるものであるのに対し、「人的役務提供事業の対価」は、自ら人的役務を提供するのではなく、自分と雇用関係にある者や自己に専属する者などの、他人による人的役務の提供を行うことに対する対価である点において異なります。
このコラムでは、この租税条約における給与、人的役務の提供に対する報酬の取り扱いについて解説致します。
なお、租税条約については以下のコラムも併せて御覧ください。
日本との取引関係が盛んである国のうち代表的な国の一つであるアメリカとの間で締結されている日米租税条約においては、給与、人的役務の提供に対する報酬について雇用契約に基づく給与所得と雇用契約に基づかないそれ以外の所得に分類し、それぞれ異なる取り扱いを規定しております。
まず雇用契約に基づく給与所得については、例えば米国の居住者が出張等により日本で働く場合、当該日本での勤務に対応する部分の金額については、日本でも課税できることとする一方、以下の要件の全てを充足する場合には、短期滞在者免税の特例として日本での課税を免除することとされております。
給与所得については、日米租税条約以外の租税条約においても短期滞在者免税の期間が条約により若干異なるものの(183日ではなく180日等)概ね日米租税条約と同じ内容が規定されております。
次に給与所得以外の所得のうち「自由職業所得」について日米租税条約では、一方の国の居住者が他方の国において固定的施設を有し、当該報酬が固定的施設に帰属する場合のみ、居住地国でない国において課税をすることができるものとしております。ここで自由職業には、学術上、文学上、美術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含むものとしております。
なお「自由職業所得」については、タイ等一部の国との間の租税条約では上記の日米租税条約の取扱いと異なる扱いが規定されており、タイとの間における租税条約では「自由職業所得」について給与所得と同じ取り扱いが規定されております。
なお、「人的役務の提供に対する報酬」の中でも役員に対する報酬については大半の国の租税条約において、役員が居住地国でない国の企業の役員に就任している場合、当該企業の居住地国で課税をすることができるものとされ、従業員の給与の取り扱いとは異なる取り扱いが規定されていることに留意が必要です。
なお、非居住者に対する源泉徴収については興味のある方は以下のコラムもあわせて御覧ください。
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