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移転価格税制_無形資産のロイヤルティ

2018.7.2 知的財産(無形資産)の貸与に係るロイヤルティ

グローバル展開を行う日本企業において、日本親会社において研究開発活動を行いその結果取得した特許権やノウハウ等といった知的財産を海外子会社サイドで用いて、海外で製造や販売等の活動を行うといった取引形態は一般に見られる取引形態であるものと思われます。ここで、日本親会社が資金拠出し取得した知的財産を用いて海外子会社サイドでは事業展開を行うことから、親会社で保有する知的財産を海外子会社で使用することに伴うロイヤリティ支払の必要性を検討することが移転価格税制上の論点になります。このコラムでは、知的財産使用に伴うロイヤリティについての移転価格税制上の現行実務における取り扱いについて解説致します。

移転価格税制の無形資産の範囲は所得の源泉となりうるものを幅広く含んでいる

特許権やノウハウ等の知的財産は移転価格税制では無形資産という呼称を用いますが、移転価格税制上の無形資産に含まれるものとして、国税庁の移転価格事務運営要領では以下のような重要な価値を有し所得の源泉となるものを総合的に勘案することとされております。

  • 技術革新を要因として形成される特許権、営業秘密等
  • 従業員等が経営、営業、生産、研究開発、販売促進等の企業活動における経験等を通じて形成したノウハウ等
  • 生産工程、交渉手順及び開発、販売、資金調達に係る取引網等

上記のように、営業秘密や取引網といったものまで所得の源泉となるものであれば、含まれることから、一般的な知的財産と比較しても無形資産は更に広い概念であるものと考えられます。

無形資産の貸与に係るロイヤリティの水準を独立価格比準法で直接算定できるケースは多くない

関連者間取引に限定されたことではありませんが、無形資産の貸与に係るロイヤリティについては一般的に次の3つの手法が考えられております。

  1. マーケットアプローチ
  2. インカムアプローチ
  3. コストアプローチ

まず、1.マーケットアプローチとは、同様の無形資産が同じ市場でどのような水準のロイヤリティ料率で貸与されているかについて、非関連者間で行われた比較対象取引を用いて確認する方法であり、租税特別措置法第66条の4において定められている独立価格比準法(CUP)と同等の方法を用いることを意味しております。

このマーケットアプローチによる方法は、比較可能な非関連者間取引データがあれば最も直接的にあるべきロイヤリティの水準を算定できる一方で、そもそも独自性を付加価値の根源とする無形資産について、同様の無形資産の非関連者間取引データを入手できる状況は稀であり、実際に適用されるケースは多くない方法であるものと考えられております。

従って、現実的には2.インカムアプローチもしくは3.コストアプローチのいずれかを選択するケースが実務上は多いものと考えられます。

ロイヤリティの水準算定にあたってのインカムアプローチとは、対象となる国外関連取引の対価を直接的に算定する方法でなく、当該無形資産を用いずに同様の事業活動を実施した場合に得られる定型的な活動を行う企業の利益水準を外部データベースをもとに算定し、海外現地法人で計上される利益から定型的な企業活動を行う企業の利益水準を差し引いた超過分について、無形資産に由来する超過的利益と捉えロイヤリティの水準とする方法であり、我が国の移転価格税制の執行上は租税特別措置法施行令第39条の12第8項において規定されている取引単位営業利益法及び残余利益分割法が該当することになり、以下の算式がロイヤリティの水準になります。

ロイヤリティ=海外現地法人の利益-外部データベースを用いて算定した現地において定型的な活動を行う企業の利益

一方、3.コストアプローチとは、貸与の対象となる無形資産を構築や維持管理するために要するコストをベースとして、貸与期間に少なくとも当該コストを回収できるだけの水準にロイヤリティ料率の設定を行う方法になり、租税特別措置法第66条の4において定められている原価基準法(CP法)に準ずる方法と同等の方法が該当することになります。

マーケットアプローチによる方法がデータの入手可能性の観点から適用することができるケースが限定的であるため、実際の実務の現場においてはインカムアプローチもしくはコストアプローチにより、ロイヤリティの算定を行っているケースが多いものと考えられます。

 

インカムアプローチは理論的にはコストアプローチより優れているが、実際にはコストアプローチを適用しているケースも多い

マーケットアプローチによる手法が情報の入手可能性の点から現実的に適用可能な状況が多くないイことに鑑みると、インカムアプローチもしくはコストアプローチのどちらかから、もしくは併用する形で適用するケースが実務上は多いものと考えられます。

無形資産の価値の源泉は当該無形資産が将来において企業にもたらす超過的利益であることに鑑みると、無形資産の貸与に伴うロイヤリティの水準を当該無形資産から生じる超過的利益により評価するインカムアプローチによる手法は理論的には優れた手法であるものと考えられます。

一方、無形資産の貸与に伴うロイヤリティの水準と当該無形資産の構築や維持管理に要したコストは本来的には直接関連しないため、コストアプローチによる手法はインカムアプローチによる手法と比較すると理論的には裏付けに乏しい手法であるものと考えられますが、実際にはコストアプローチによりロイヤリティの水準を決定する事例は多くみられますが、その理由はインカムアプローチの適用が実務上困難な事例も多くみられることにあります。

インカムアプローチの適用が困難になる理由しては、今後無形資産を使用し収益を獲得することを予定している段階で、当該無形資産から生じる将来収益をある程度の確からしさをもって予測することは困難なケースが多々あることによります。一方でコストアプローチの長所としては、無形資産の構築や維持管理に要するコストについては、将来の収益予測と異なり相応の確からしさをもって計算することができるため、日本・海外双方の国の税務当局に対し疎明しやすいことになります。特に海外子会社において今後本格的な事業展開を開始するというような局面にある場合においては、海外子会社において事業が軌道に乗り利益が計上される以前の段階においては、日本において当該無形資産の構築維持に要したコストだけは回収するコストアプローチによる手法を適用することは実務上多々あるものと考えられます。

ロイヤリティの水準を検討する際には、無形資産の構築・維持管理に要したコストを回収できているかと海外子会社の利益率の水準が適正な水準に収束しているかの2点の検討が必要

税務調査への備えという観点からロイヤリティの検討をした場合、企業より業界ビジネスに精通していない税務当局が、企業が把握できない業界における特定の無形資産の貸与に伴うロイヤリティの水準をマーケットアプローチにより直接算定できるケースというのはあまり想定されないケースかと考えられます。

従って無形資産の貸与に伴うロイヤリティの水準を検討する際には、無形資産の構築・維持に要したコストが回収できるか及び無形資産を使用しビジネスを行う海外子会社の利益率が現地における同業他社の利益率と比較し著しく高くないかの2点から検討を行うことが税務調査への備えになるものと考えられます

なお無形資産の使用に伴い生じる将来収益の予測が困難であることに起因し、無形資産の国外関連者間取引における適切な対価設定を行うことが困難であることからOECDによる提言を受け、「所得相応性基準」の導入が日本においても議論されております。

この所得相応性基準とは、無形資産の取引が行われた後の財務実績に基づき、税務当局が事後的に取引対価を調整することを許容する仕組みになります。

具体的には、無形資産の評価の困難さはその無形資産を使用することによって生じる将来収益を予測することが困難であるところに起因するものですが、所得相応性基準は税務当局が無形資産取引実施時点ではわからなかった事後の財務実績に基づき、過去に行われた無形資産取引について追徴取引を行うことを許容するものになります。

このことは、税務当局の視点からすると多国籍企業による無形資産取引による課税逃れを防止するために極めて有効なツールである一方、納税者の視点からすると無形資産取引実施時点では把握しようのない将来の財務実績値に基づき課税されることとなるため、納税者の予測可能性を著しく害することになりかねない制度になることから導入の是非が議論されているところになります。

「所得相応性基準」は日本においてはいまだ議論の段階で、将来実際に導入されるかは未定の状況でありますが、このような制度が議論されていることからも一度ロイヤリティの水準を決定した後においても海外子会社の利益率の水準を継続的にモニタリングし、ロイヤリティの水準の見直しの必要性を継続的に検討する必要があります。

なお、無形資産の貸与に伴うロイヤリティについて製造業等ではロイヤリティという形で別途収受せずに無形資産貸与に伴う対価は製品価格に含めるという形での取引も実務においては多々行われているところと考えられますが、その際の海外子会社との対価設定に関する考え方についても、基本的にはロイヤリティの料率設定と同じ考え方に基づき国外関連取引の対価設定を行うこととなります。

【当事務所サービス】                              当事務所では、移転価格税制に関する以下のようなサービスを提供しておりますので、お困りの際は随時以下のお問合せフォームよりご連絡ください(ご相談については、本契約締結までは無料になります)。                          

  • 知的財産の使用を伴う海外子会社との取引実施の際の取引価格についてのルール(移転価格ポリシー)設定の際のアドバイス
  • 移転価格税制対策のための社内関係部署の協力体制を構築するための社内の勉強会及び社内マニュアル作成支援
  • 移転価格文書(ローカルファイル)作成支援

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