BEPSとは、Base Erosion and Profit Shifting の略称で、日本語では「税源浸食と利益移転」といい、現在の国際税務についての潮流を理解するうえでは欠かせない概念になりますが、この言葉を聞いただけでは具体的にイメージしにくい概念について、このコラムでは初めて耳にした方でも理解しやすい形で解説致します。
現代のグローバル化した経済においては、必ずしも本社所在地と現実に経済活動を行う場所が一致する必要はないため、多国籍企業は現実に経済活動を行う国と異なる国に本社を設置することが可能です。企業の本社が設置された国においては、企業の存在により法人税の納税や新たな雇用の確保といった経済的利益を獲得できることから、特にその国の市場が充分に大きくない等の理由により海外からの企業の誘致なしには充分な経済発展が望めない国を中心として、外資系企業の誘致競争が活発化し、その手段の一つして国家間の法人税率の引き下げ競争が発生し、法人是率が著しく低い国家や極端なケースでは、無税の国家が生じることとなりました。
多国籍企業では本社移転を含む組織再編や国ごとに異なる税法の取り扱いの違いを利用することにより、利益を本来の経済活動を行う国から著しく法人税の低い国や無税の国に移転することにより、本来は経済活動を行っている国で納付すべき法人税を節税するという手段が横行するという事態が発生しました。
このような本来経済活動を行っている国で計上すべき利益を移転し、税源が浸食されている状態を税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit shifting-BEPS)とよび、OECDではこのようなBEPSを解消するために2015年10月に15のBEPS行動計画をまとめた最終報告書をまとめました
OECDがまとめたBEPS行動計画は全てで15あり、その中にはタックスヘイブン税制や恒久的施設(PE)に関するものもありますが、その中でも特に重要と考えられる項目は「BEPS行動13 移転価格文書及び国別報告書に係るガイダンス」であり、日本においてもBEPS行動計画を受け2016年度税制改正において移転価格の文書化に係る改正が行われました。当該税制改正において規定された3文書のうちマスターファイル及び国別報告書については、連結ベースでの総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループのみが対象となり、ローカルファイルについては従来から存在していた移転価格文書と同様の内容のものであることから、中堅・中小企業に限定すれば当該税制改正そのものでは従来からの実務に大きな変更は生じないものと考えられますが、移転価格を中心とする国際税務全般についての税務当局からの関心が高まっていることは疑いようもない事実であり、海外展開を行う中堅・中小企業にとって移転価格税制を含む国際税務全般について必要な対策を講じることは緊急の課題であるものといえます。
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